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天音光人の文学的日常

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東野圭吾の小説の魅力

東野圭吾の人気作をいくつかまとめて読んでみて、その魅力がなんとなくわかってきました。それは一言でいえば、人生というミステリを見事に描き出しているということです。

東野圭吾の作品では、人間関係や出来事の関係が奥の方でつながっていて、それが謎をなしているのですが、読み進むにつれて、それらの隠れた関係が次第に明らかになっていきます。そして、その解明の過程が実にうまく書かれていて、読み終わるとすべての謎が解けて、なるほどそうだったのか、という感動が与えられるのです。

特別斬新なトリックが使われているわけではありませんが、人々の行動の謎、なぜこの人はこんな不可解な行動をするのかという謎が、背後に隠れている複雑な人間関係や過去の出来事との関係の中で動機づけられていて、それが解明されるのです。

その意味で、まさに人生というミステリを描き出しているわけで、その点において東野圭吾は見事な手腕を発揮している作家だと思いますし、そこに人気の秘密があるような気がします。

# by amanemitsuhito | 2019-03-10 18:20 | 文学一般
東野圭吾の『ナミヤ雑貨店の奇跡』(角川文庫)を読んでいて、興味深い一節に出会いました。これは第2章の「夜更けにハーモニカを」の中に出てくる箇所です。

この作品はいわゆる連作短編で、第2章ではシンガーソングライターを目指す克郎という青年が主人公ですが、たまたまある音楽評論家に自分の作品を聴いてもらったところ、その音楽家はプロになるのは考えない方がいいと答えます。

その理由として、歌はうまいけれど、「君程度に歌のうまい人間はざらにいる」し、曲も「素人が作ったわりにはいい」けれども、「残念ながらそのレベル」で、「既存の曲をイメージさせ」、「新味がない」と言うのです。

これは小説についてもあてはまると思いました。そして東野圭吾自身、かつてはそんなことを言われたりしていたのではないかとも思いました。やはり独創性というものが必要なんですね。

# by amanemitsuhito | 2019-02-24 16:24 | 小説作法
近年なぜかベストセラーになっている吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』(岩波文尾)を読みました。実を言うと、私は中学生の時に学校の図書室でこの本を借りて読み、感銘を受けた記憶があります。

そんなわけで、久しぶりに読み返したということになるのですが、まず感じたのは、古き良き時代の教養主義あるいは人格主義に対するノスタルジーでした。

この作品はジャンルとしては児童文学ですが、旧制中学校1年生のコペル君という少年が学校や家庭での日常生活の中で、自分が社会の中で生きている存在であることを理解し、その中でどのように自分の人格を確立して生きていくかということがテーマとなっています。

書かれている内容や道徳観は現在でもまったく違和感はなく、共感できるものばかりではあるのですが、こうした人格主義や教養主義は当時でもごく一部の裕福な階級でこそ可能だったわけで、現在の大衆社会でも多少の古臭さを感じさせます。

だからこそ、この作品がなぜ現代において急にベストセラーになったのかは興味深い問題です。効率や実利一辺倒の時代だからこそ、こういったちょっと古い人格主義が意外と受けたのかもしれません。

# by amanemitsuhito | 2019-01-10 12:48 | 読書記録
私は自己啓発本の類いも結構読んでおりまして、今回は小森圭太の『科学的 潜在意識の書きかえ方』(光文社)を読みました。

科学的というのは量子力学の説明を用いて潜在意識と現象との関わり方を述べているのですが、それは多少のいかがわしさもあり、まあどうでもいいです。しかし、感銘を受けたのは、物事の考え方や言葉を変えるということの重要性です。

とくに、以下のような言い換えは肝に銘じておきたいと思います。

「どこがダメなんだろう」→「どうしたらさらによくなるだろう」
「頑張ろう」→「最高の自分を発揮する」
「これが問題だ」→「これが課題だ」

本というのは何か一つでも本当に有益なものが得られれば、読んだ価値があったといえるものです。


# by amanemitsuhito | 2019-01-04 18:22 | 読書記録
一日遅れてしまいましたが、みなさま、明けましておめでとうございます。平成最後の正月ということになりますね。今年もよろしくお願いいたします。

といっても、読者数は一日平均2~3人なのですが、少しでも読んでくださる方がいらっしゃる限り、細々とでも続けていきたいと思っています。できれば一週間に一回は更新するように努力します。

とりあえずは新年のご挨拶のみにて失礼いたします。


# by amanemitsuhito | 2019-01-02 12:51 | 自己紹介・プライベート

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