乾くるみの『リピート』(文春文庫)を読みました。これは映画化やテレビドラマ化もされているようですが、原作とはかなり内容を変えてあるようです。
さて原作の『リピート』ですが、これは過去のある時点(十ヶ月ほど前)に戻って人生をもう一度(あるいは何度でも)やり直すという設定で、最初はそのリピート自体がなんらかのトリックかと思って読んでいたのですが、それ自体はトリックではなく、たんにSF的な設定ですね。ミステリとして読むと、そこでまずがっかりします。以下ネタバレがあります。
最終的には犯人(?)の企みが明らかになりますが、動機が弱すぎるし、今ひとつ納得できませんでした。また、主要登場人物全員が最後には死んでしまうという点で、クリスティの『そして誰もいなくなった』が念頭に置かれているようですが、クリスティの方では犯人の綿密な犯行計画に基づいて殺人が行われるのに対して、『リピート』の方では偶然的要素が強すぎて、ご都合主義になってしまっています。その意味では、クリスティの足下にも及ばないでしょう。
というわけで、面白い点もあるけれども、不満が残る作品でした。5点満点の評価なら2点です。