若竹千佐子の『おらおらでひとりいぐも』が芥川賞を取ったことで、これから老人を主人公として老人のために書かれた老人文学が少しは注目されてくるのではないかと思っています。
それにしても、高齢化社会といわれて若者が減って老人が増えている中で、これまでなぜ老人の老人による老人のための文学があまりなかったのだろうかと考えてみました。その結果、思い当たったのは以下のようなことです。
老人は人生経験が豊富で、かつては青年でしたから青春文学なども理解できますし、ノスタルジーを感じながら読むことができます。学生生活だって経験していますから、学園物も読めるわけです。ところが若者には老人の心境はわかりませんから、老人文学はまず読まないでしょう。
そんなわけで、青春文学はほぼすべての世代の人が読者層となりうるのに対して、老人文学はほぼ老人のみしか受け入れられないと思われます。そういう理由から、老人文学はあまり流行らなかったのでしょう。しかし、これからは高齢化社会が加速的に進行しますから、状況は変わってくるのではないかと思っています。