秋山絲子の『沖で待つ』(文春文庫)を読みました。表題作は芥川賞受賞作で、そのほかに短編『勤労感謝の日』と『みなみのしまのぶんたろう』が収録されています。どれもそれなりに面白かったのですが、やはり『沖で待つ』が一番いい出来だろうと思います。
『沖で待つ』のテーマは男女の友情です。よく男と女の間に恋愛感情なしの友情が成立するかということが言われますが、この作品ではそのような恋愛感情抜きの男女の友情が見事に表現されています。これが男同士の友情の話ならば平凡ですが、男と女の友情というのはあまり文学作品で扱われたことはないのではないでしょうか。その点が評価されて芥川賞受賞となったのでしょう。
他の二編はいまいちという感じでした。