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村上春樹『ノルウェイの森』の突撃隊はなぜ突然消えたのか

村上春樹のベストセラー小説『ノルウェイの森』の前半に、突撃隊と呼ばれる個性的な人物が登場します。彼は語り手の「僕」すわなちワタナベ・トオルの学生寮のルームメイトで、朝から部屋の中でラジオ体操をしては「僕」をうんざりさせるという変わった人物ですが、国土地理院に入ることを目指して地理学を勉強している勤勉実直な学生です。どもりながら話をするクセがあり、女の子と何を話したらいいかわからないという堅物でもあります。

そんな突撃隊が夏休み明けに、何も告げずに突然大学をやめて故郷に帰ってしまいます。小説の中では魅力的な人物であっただけに、なぜ突然消えたのかが不思議に思われました。その理由は小説の中では何も説明されていません。

そこで私はいろいろと考えてみたのですが、おそらく学生紛争に巻き込まれたのではないだろうかと思いました。突撃隊はいわゆるノンポリ学生で、学生運動からは距離を置いて地理学をひたすら勉強しています。それが学生運動のセクト間の争いにでも巻き込まれたのではないかというのが私の推測でした。

すると、先日ちょうど『1973年のピンボール』を読んでいたら、それに当てはまるような学生の話が出てきました。それは第5章で、「僕」にベッドをくれた学生のことです。その学生は地方の金持ちの息子で、大学内で別のセクトの連中に殴られ、作業靴で顔を蹴られて目を悪くして大学をやめ、田舎に帰ったと書かれています。まさにこれこそが、突撃隊が大学をやめて田舎に帰った理由なのではないかと思うのです。

ちなみに、村上春樹自身の当時の学生紛争への批判的な見解は『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』にも書かれています。




by amanemitsuhito | 2017-06-02 07:34 | 読書記録 | Comments(0)

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