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天音光人の文学的日常

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イメージから小説を書く(短編『桜の木の下で』)

自作短編の中で今のところいちばん気に入っている作品『桜の木の下で』は、最初に桜の花びらに埋まっている死体のイメージがあって、そこから構想していって書き上げました。

桜の花びらと死体のシーンは冒頭かラストのどちらかに置くのが印象的になります。最初は冒頭に置こうかと思ったのですが、そうするとどうしてもミステリかホラーになってしまいます。私はなんとなく、桜の季節なのだから甘い恋愛ものにしたいという気持ちがありました。それともう一つ、来年の桜の花を見るときには自分はどんな風になっているだろう、などと考えたのです。

そこから、来年の桜を見ようという約束をして、それが果たせなかったという悲恋の話はどうだろう、と考えました。あとは、ラストの死を残酷に見せないためには、死体はある程度天寿をまっとうした老人でなければならない、という気がしてきたのです。

そこから、妻に先立たれた男の話にすることにしました。そこで、以前に見たアニメ映画『カールじいさんの空飛ぶ家』の冒頭シーンを思い出したのです。妻と知り合うところから、結婚して苦楽を共にし、やがて妻が病気になって亡くなるところまでを回想します。その部分が非常に印象的だったので、なんとか使えないだろうかと考えました。

最後に妻の幽霊らしきものが現れるのは、浅田次郎の『鉄道員』に似ていますが、あれが幽霊なのか、それとも老人の幻想なのかは、曖昧にしてあります。

それなりにうまくまとまったとは思いますが、もう少し語りに工夫が必要だったかもしれません。

『桜の木の下で』http://ncode.syosetu.com/n0554dx/




by amanemitsuhito | 2017-04-22 07:04 | 自作について

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