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天音光人の文学的日常

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東野圭吾の『新参者』(講談社文庫)を読みました。正確に言えば、以前に一度読んだことがあるので、久々に読み返しました。この作品は週刊文春ミステリベスト10とこのミステリが読みたいで1位を獲得していて、かなり評価の高いものです。

実際、私もいい作品だと思います。特徴的なのは、一つの殺人事件の捜査を中心として、その周辺にいる関連人物たちの日常の謎が描かれていて、連作短編形式なのですが、最後にはそれがみんなつながって全体をなしているという形になっています。その全体の構成の仕方が見事なのです。

ただ、唯一不満が残るのは、その中心となる殺人事件がしょぼいということです。何よりもその動機がありきたりで陳腐だということなのです。むしろその周辺人物たちの日常の謎と人情の方が、非常によく書けていると感じました。

その意味で、この作品のよさはミステリではなく、むしろヒューマンドラマ的な部分にあるのではないかと思います。

# by amanemitsuhito | 2019-04-13 21:22 | 読書記録 | Comments(0)
辻村深月の『スロウハイツの神様』(講談社文庫)を読みました。上下二巻からなる長い作品で、わりと初期の頃のものです。スロウハイツというアパートの住人たちの人間関係を軸に、その日常や過去の秘密などが描かれています。

Amazonのレビューの評価も比較的高い作品で、読後感も悪くはないです。とくに伏線の回収の手際の良さは見事です。しかし、小説技法としての未熟さも目立ち、後期の作品に比べれば、私はあまり高く評価しません。

まず、前半が非常に退屈です。終盤に驚くべき真実が明らかになるのですが、それが前半の方で謎として機能していないので、もったいないです。その謎を序盤の方で、もっと読者を惹き付けるような形で提示しておけばよかったのにと思いました。

それから、視点がいわゆる神視点で書かれているのですが、視点人物が誰なのかがわかりにくく、そのためにところどころ読みにくいと感じました。それとも関連して、会話の発言者が誰なのかもわかりにくい箇所が少なくありませんでした。

それらの欠点は後期の作品では概ね改善されていますので、私としては辻村深月の作品は、やはり後期のものがよくできていると思います。


# by amanemitsuhito | 2019-04-05 17:58 | 読書記録 | Comments(0)

ブログ開設2周年

このブログを開設したのが2017年4月2日でしたので、今日でちょうど2周年になります。

最初の1年間はなんとか毎日更新していたのですが、2年目にはだんだん更新頻度が減ってきて、最近では1カ月ぐらい間が空くことも出てきました。

しかし、これではいけないと思いますので、3年目はなんとか週一回は更新したいと思います。やはり書こうとしないことには書けないものですし、アウトプットも重要です。

がんばりたいと思います。

# by amanemitsuhito | 2019-04-02 13:37 | 自己紹介・プライベート | Comments(0)
村上春樹原作の『ノルウェイの森』の映画版をブルーレイで観ました。感想は一言でいうと、微妙ということです。ネット上のいろんなレビューもだいたいそんな感じですね。悪くはないんだけど、何か物足りないというところでしょうか。

配役はけっこう当たっていると思います。直子も緑も、渡辺くんも、それぞれあんな感じだろうなというイメージ通りでした。映像もきれいです。

ただ、どうしても原作から省かれている部分も多いし、映画だけだと登場人物たちの迷いや苦悩が十分には表現できていないのではないかという気がしました。

やはり村上春樹の作品を映画化するのは難しいような気がします。

# by amanemitsuhito | 2019-03-26 12:47 | その他 | Comments(0)

東野圭吾の小説の魅力

東野圭吾の人気作をいくつかまとめて読んでみて、その魅力がなんとなくわかってきました。それは一言でいえば、人生というミステリを見事に描き出しているということです。

東野圭吾の作品では、人間関係や出来事の関係が奥の方でつながっていて、それが謎をなしているのですが、読み進むにつれて、それらの隠れた関係が次第に明らかになっていきます。そして、その解明の過程が実にうまく書かれていて、読み終わるとすべての謎が解けて、なるほどそうだったのか、という感動が与えられるのです。

特別斬新なトリックが使われているわけではありませんが、人々の行動の謎、なぜこの人はこんな不可解な行動をするのかという謎が、背後に隠れている複雑な人間関係や過去の出来事との関係の中で動機づけられていて、それが解明されるのです。

その意味で、まさに人生というミステリを描き出しているわけで、その点において東野圭吾は見事な手腕を発揮している作家だと思いますし、そこに人気の秘密があるような気がします。

# by amanemitsuhito | 2019-03-10 18:20 | 文学一般 | Comments(0)

天音光人の文学的日常


by 天音光人