今さらながらですが、菊池寛の『真珠夫人』を読みました。十年ほど前だったが、テレビドラマにもなって人気が出たのを記憶しています。大正時代に書かれた小説ですが、今読んでも面白いです。
主人公は瑠璃子という若い家族の女性で、直也という相思相愛の相手がいたのですが、成金の荘田勝平という男のパーティーで成金を馬鹿にして、それを荘田に聞かれてしまいます。荘田は復讐のために金と策略を使い、強引に瑠璃子と結婚し、瑠璃子はそれに復讐しようとします。
小説では荘田は悪役として描かれていますが、読みようによってはモテない男の悲しさを背負ってもいます。ちょうど『ニーベルングの指環』のアルベリヒと重なります。荘田のような平民はどんなにがんばって金を稼いでも、華族の女性の愛を得ることはできず、成金と馬鹿にされるしかなかったのです。一方、瑠璃子や直也は生まれながらにして華族の身分を得ているのですから。
そういう読み方を可能にしているのも、この作品の優れた点だと思います。