天音光人の文学的日常

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第158回芥川賞・直木賞の発表が近づきました。いつもならラジオ日本で大森望と豊崎由美の『文学賞メッタ斬り』を聴くのですが、今回はラジオ日本では放送されず、ゲンロンカフェのライブのみらしいので、聴くことができません。

そんなわけで、今回は様々な状況から読まずに勝手に予想してみることにしました。作品を読んでいないので、作品の善し悪しではなく、状況といいますか、空気を読んで、予想しようというわけです。まさに当たるも八卦、当たらぬも八卦です。

芥川賞ですが、今回はとくに下馬評が高いのはなさそうで、予想は難しいのですが、結論から言えば、若竹千佐子の『おらおらでひどりいぐも』です。これはこれまでにないような老人小説で、高齢化社会の今にぴったりだと思います。高齢者は若者よりは本も買うでしょうし、これからの文学は高齢者もターゲットにしていくべきでしょう。その意味で、この作品を受賞させる意義はあるのではないかと思います。

直木賞は予想が難しいですね。話題性から言えば藤崎彩織の『ふたご』でしょう。しかし小説としての出来については、いろいろと酷評もされているようです。直木賞はけっこう技術力であったり完成度であったりするものも求められますので、同じく文藝春秋社刊の綾瀬まるの『くちなし』の方が可能性は高いかもしれません。

発表は16日夜です。このいいかげんな予想が当たるかどうか、楽しみですね。




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# by amanemitsuhito | 2018-01-16 07:08 | 文学一般 | Comments(0)
柳本光晴の『響~小説家になる方法~』の第1巻だけ読みました。Amazon の Kindle で期間限定無料購読ができたので、試してみたのです。これは2017年のマンガ大賞を受賞した作品だそうで、期待して読んでみましたが、失望の方が大きかったです。Amazon のレビューでも賛否両論あるようで、微妙な評価の作品ですね。

まず、これは小説家になる方法が書かれているというわけではなく、天才的な女子高生作家が自分の能力を発揮して活躍していく様を描いたものです。もちろん天才としての苦悩もあるようですが、凡人の私にはあまり共感できません。それに一つの作品で芥川賞と直木賞を同時受賞して170万部を売り上げるという展開になるらしいですが、リアリティなさすぎです。また売れるという点では『ハリー・ポッター』にはかなわないわけですし、だからといって『ハリー・ポッター』がとほうもなくすごい作品というわけでもないでしょう。

それに、作中で響が書いたとされる『お伽の庭』は「山あいの寒村を舞台に、その中での世界観と死生観を描いた作品」と書かれいますが、これだけではたいして面白そうには見えないですね。村上春樹の『1Q84』でふかえりが書いたとされる『空気さなぎ』は概要だけでも何だか面白そうな作品だと思えるのとは対照的です。

ついでながら、作中には主人公の天才女子高生作家である響のパンチラシーンや水着カットもありましたが、まったく萌えないどころが、萎えました。






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# by amanemitsuhito | 2018-01-15 10:27 | 読書記録 | Comments(0)
さやわかの『文学の読み方』(星海社新書)を読みました。星海社新書はけっこうサブカルチャー系の文学理論的なものなどを出していますが、これもちょっと個性的な文学論でした。

主張自体は明快で、日本では明治以来、「文学は現実を描く」あるいは「文学は人の心を描く」ものだという価値観が支配的だったけれども、それは錯覚であり、それによって文学作品の評価をめぐって、さまざまな混乱が生じているのであり、文学には現実を描くことなどできないということを認識することが重要だ、と言うわけです。

そのことを文学史やメディア史をたどりながら論じていて、主張自体はよくわかります。ただ、ここでいう現実とは何か、あるいは文学で描かれる(虚構)世界は現実の世界とどんな関係にあるのか、という点については、時代により人により違っているのではないかと思います。その問題があいまいなままでは、文学は現実を描けないと言っても、あまり意味がないのではないかと思いました。




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# by amanemitsuhito | 2018-01-14 07:17 | 読書記録 | Comments(0)
以前にもこのブログで書きました蘇部健一の『小説X』は、タイトルを公募していましたが、最終的には『あなたをずっと、さがしてた』に決定したそうです。内容ともぴったり合っていますし、まずまず妥当なところだろうと思います。しかし、今ひとつインパクトに欠けていて、タイトルを見て読もうという気になるかとなると、微妙ですね。

インパクトのあるタイトルが売れ行きに大きく影響しただろうなと思えるような作品として思いつくのは、以前にも書きましたが、『君の膵臓を食べたい』とか『世界の中心で、愛をさけぶ』などですね。他にも『夫のち○ぽが入らない』なんかはインパクト強すぎですが、このタイトルのおかげでベストセラーになったといえるでしょう。

それはそうと、『世界の中心で、愛をさけぶ』はもともとは『ソクラテスの恋』というタイトルだったそうですが、編集者の助言で変更したのだそうです。たしかに『ソクラテスの恋』では、なんのこっちゃという感じで、読んでみようという気にはあまりなりません。他にも村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』も群像新人賞応募時のタイトルは Happy Birthday and White Christmas だったそうで、後に変更されたものです。

また、村上龍の芥川賞受賞作『限りなく透明に近いブルー』もインパクトのあるいいタイトルだと思いますが、これも当初のタイトルは『クリトリスにバターを』だったそうで、これまたインパクトありすぎですね。



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# by amanemitsuhito | 2018-01-13 07:26 | 文学一般 | Comments(0)
西加奈子の直木賞受賞作『サラバ!』(小学館文庫)を読みました。とても面白かったです。しかしその一方で、惜しいというか、残念というか、かなり大きな物足りなさを感じました。

全体としては、一人の男性の語り手による、その前半生の物語で、同時にその家族の崩壊と再生の物語でもあり、一つの時代の物語でもあります。キャラクターも個性的で、様々なテーマやモティーフを取り込んでいて、面白いエピソードも多数含まれています。

それにもかかわらず何が不満なのかというと、終盤で急に説教臭くなり、特定の道徳観が押しつけがましく感じられるようになっている点です。これはもっと控えめに主張しておいたほうがよかったでしょう。また、ラストの旧友との再会は感動的なのですが、全体としては陳腐で安っぽいエンディングになっていて、前半でのスケールの大きさが急に卑小になってしまった感があります。

そのほか、姉の貴子のキャラクターが終盤に急に変化しているのも不自然ですし、父親が母と離婚した原因もあとからとってつけたような感じで、もう少しきちんと伏線を張るべきだったろうと思います。

そんなわけで、非常に勢いがあっていい作品なだけに、いくつかの欠点がひどく目についてしまって、残念な印象をもってしまいました。




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# by amanemitsuhito | 2018-01-12 07:18 | 読書記録 | Comments(0)

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